見上げれば、そのすべては自由なのだから  GOLD EXPERIENCE: 世界を旅する黄金体験
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夜明けの聖地
明け方、なんとなく目が覚めた。枕元に置いてあった腕時計を薄目で見ると、まだ5時前だった。僕の宿泊していたラクシュミー・ゲストハウスは街道から奥まった場所にあるため、明け方マハーボディ寺院を訪れる巡礼者たちのお経の声が響いてくることはないし、早朝になると決まってけたたましく鳴き叫ぶ近隣の民家の鶏はまだ眠っているようだった。

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ラクシュミー・ゲストハウス前の細路地は街灯がないため、夜は暗闇になってしまう。

予定よりも少し早く起きてしまったが、不思議と頭はスッキリしていた。窓から外を眺めるとまだかなり薄暗かったが、これはもしかしたら寺院に向かう巡礼者たちよりも早起きしたかもしれないなと、なぜか少しだけうれしい気分になり、早々に準備をして宿の外に出た。

思った通り外はまだ暗く、そして人影は皆無だった。日の出まではまだ時間がある。この時間帯からなら、午前中にかなりいろいろなことができるなと考えながら、歩き始めた。

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近隣の居住区はまだ寝静まっているようだった。(左)街道沿いに町の中心地区へと向かう。(右)

目の前の細路地を真っ直ぐ歩いて行くと、突き当たりには街道があって、街道沿いにしばらく歩いて行くと、マハーボディ寺院のある町の中心地区の広場に出る。

細路地から街道に出て、そのまま街道沿いを町の中心地区に向かって歩いて行く。マハーボディ寺院へと向かう巡礼者の列はまだいないようだった。車通りひとつ無い無人の大通りを歩いていると、遠くからブロロロロロ・・・と車のエンジンらしき音が聞こえてきた。とっさに音のする方向に目を向けると、1台の乗合リクシャーが後ろから走ってくるのが見えた。その乗合リクシャーが僕の脇を走り去る瞬間、信じられない光景に一瞬目を疑ってしまった。

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日中であれば露店がひしめく、明け方の寺院前の広場。さすがに人はいるようだが・・・。

無人の乗合リクシャーを運転していたのは、まだ10歳には到底満たないだろうと思われる、幼い少年だった。日本で言うならせいぜい小学生低学年程度しかない小さな体には、大人向けのリクシャーの運転席は明らかに不釣り合いで、普通に座ってもアクセルペダルまで足が届かないので、かなり無理のある前傾姿勢で大型のリクシャーを運転していた。

これまでもインドを旅している間に、年端もいかぬ少年たちが大人顔負けで働く姿を見てきたが、これほど幼い少年が、しかもたった1人で大型のオート・リクシャーを運転しているのにはさすがに驚いた。ここが貧しい田舎町であることを実感すると同時に、幼い頃から働き手として頑張る彼の姿は、ほんの一瞬ではあるけれど今でも忘れられない。

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路上にゴミが散乱した、早朝のブッダ・ガヤーの商店街。

そうこうしているうちに町の中心地区の広場へとたどり着いた。宿を出てから少し時間が経ったこともあり、さすがに中心地区には人の姿はあったが、日中ひしめいていた露店の姿は影も形も見当たらず、早朝の静けさが漂っていた。遠くの空からは太陽の気配が感じられた。

さらに奥へと足を進め、商店街の方を歩いてみると、日中の雑踏で目立たなかったせいなのか、はたまた清掃前なのかは分からないが、路上には大量のゴミが散乱していた。

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路上に散乱するゴミ(左)は集められ、道の脇で燃やされるのだが、火力が半端ない・・・。(右)

写真で撮影するとキレイに撮れてしまうのだが、実際はなかなかに荒れ果てた状態で、このまま日々のゴミが積層していったら大変なことになりそうだなと思ったが、周囲を見渡すと道の端っこで火事かと思えるくらいの火の気で思いっきり燃やしていたりする。日本なら焼き芋でも・・・と思うところだが、インドだととてもそんな気にはならない。

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商品はきちんと陳列され、露店がメインのインドの店舗事情的にはかなりしっかりとした店構えだ。

開店準備をしているお店を覗いてみた。なんだかんだ言ってもインドの朝は早い。インドのどこを旅しても、インド人たちはまだ陽の昇らぬ時間帯から働きはじめる。

特にここブッダ・ガヤーは、早朝かなり早い時間帯から寺院を訪れる巡礼者たちで溢れるので、早い時間帯から開店するお店が多いのかもしれない。商品構成はシンプルなのだが、旅行者が必要になるような商品をきちんと揃えているのがうれしい。

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巡礼者の列が寺院を目指してやってくる。オレンジ色の装束が僧侶で、白装束が巡礼者なのだろうか。

しばらくすると、広場にようやく巡礼者の列が到着しはじめた。現地のインド人はもちろん、チベット民族や日本人などの東洋系の顔立ちの巡礼者たちの姿もあった。巡礼ツアーのようなものなのだろうか、寺院を訪れる巡礼者は団体で行動する人が多かった。

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ブッダ・ガヤーの日の出は、寺院側ではなく建物側から昇る。そして、寺院側へと沈んでいく。

寺院に入っていく巡礼者たちの姿をぼんやり見守っていると、一筋の光が頬を照らした。空を見上げると、重く鈍いオレンジ色の光を放つ太陽が、建物の上から顔を出していた。それは、複雑に張り巡らされた木の枝のシルエット越しに見る、ブッダ・ガヤーの日の出だった。

ああ、それにしてもなんという美しさなのだろうか・・・。

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あまりにいいのでもう1枚。あ~、ヤバイなこれ、iPhoneの壁紙にでもしようかな・・・。

まるで線香花火の先端の玉のような、オレンジ色の鈍い光を放つ太陽。美しいグラデーションの空。なによりも枝のシルエットが何とも言えない情景を醸していた。

インドを旅して、数え切れないほどの日の出を見た。そして、日の出と同じくらい日没を見た。ガンガーの日の出も素晴らしかったが、ここブッダ・ガヤーの日の出も負けじ劣らず美しかった。2500年前、菩提樹の下で悟りを得たブッダも、同じようにこの美しい日の出を眺めたに違いない。極貧の聖地と呼ばれる、ブッダ・ガヤーの日の出は感慨深いものだった。


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2010'10'07(Thu)23:14 [ ブッダ・ガヤー ] CM0. TB0 . TOP ▲