見上げれば、そのすべては自由なのだから  GOLD EXPERIENCE: 世界を旅する黄金体験
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戦慄の深夜の移動、ガヤー駅へ
インド、“ガヤー”(Gaya)から “コルカタ”(Kolkata)へと向かう鉄道が到着するのは、明け方の4:00am。ガヤー駅は田舎で、コルカタ行きの便が少ないこともあり、この便を利用せざるを得なかったのだが、できれば避けたかった。いや、避けるべきだった。

ガヤー駅のあるビハール州は、これまでの記事でもお伝えしたとおり、インド最貧地区と言われ、その治安は劣悪で、特にブッダ・ガヤーからガヤー駅の区間でトラブルが頻発している。早朝4時の鉄道の到着時間に間に合うよう駅に到着するためには、少なくとも2時~3時のもっとも治安の悪い時間帯に、リクシャーで移動しなくてはならない。

僕が宿泊していた “ラクシュミー・ゲストハウス”(Laxmi G.H.)のオーナーは、非常にフレンドリーで、安いシングル・ルームと同じ値段で広いデラックス・ルームにしてくれたり、いろいろサービスしてくれたのだが、ブッダ・ガヤーからガヤー駅へと向かうその日に限って彼は休みで、彼の代わりにフロントにいたのはまだ20代前半くらいの青年だった。

その日の日中、深夜2時の出発ということもあり、予めフロントにいるその青年にガヤー駅までのリクシャーの手配をお願いしておいたのだが、オーナーが休みということもあってか、かなりの高額をふっかけてきた。ガヤー駅からブッダ・ガヤーまで、行きはわずか40ルピーで来れたのだが、250ルピーもかかるというのだ。あまりの値段の差に少し悩んだが、深夜の時間帯であることと、他に選択肢がなかったので、その場はやむを得ず了承した。

深夜2時になりフロントまで行くと、暗闇の中エントランスの床で寝ている彼の姿があった。寝ている彼をさっそく起こしてリクシャーの手配はどうなっているのか聞くと、寝ぼけ眼でおもむろに携帯で電話をかけ始めた。その仕草から、どうもリクシャーを手配しているのかどうか怪しい。しかも真夜中の時間帯のせいか、まったく電話はつながらないようだった。

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明け方、日の出前のガヤー駅前は、たくさんの人で混み合っていた。

周囲にはすごい数の蚊が飛び交い、数分その場にいるだけで刺されまくったが、そのままフロントで待つこと30分、2時に手配したリクシャーは2時半になっても一向に現れる気配はなく、彼は時々携帯で番号を押す仕草をするだけで不信感が募っていた。にも関わらず、唐突に彼の口から出た言葉は「リクシャーの値段が350ルピーになった」だった。あまりにも脈絡がないので、「そんな額は払えないからオーナーと話をさせてくれ」と言うと、OKと言うのだが、一向にオーナーに連絡する素振りを見せない。そして、「やっぱり250ルピーで大丈夫だ」と言うのだ。どうにもこうにもこの青年は全く信用できない。隙さえあればふっかけてやろうという考えがダイレクトに伝わってきた。オーナー不在だとこうも乱れてしまうのか。

そうこうしているうちに時間は刻一刻と過ぎ、3時に近づいていた。このままでは埒が明かないので「3:00amになってリクシャーが来なければ、自分で探す」と言い、3時までの数分を待った。3時になり、もう行くよと話をしている時、外にリクシャーのエンジン音が聞こえた。

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駅の構内の床には、足の踏み場もないくらい大勢の人が寝ていた。

リクシャーは深夜の街道を走る。見慣れたブッダ・ガヤーの町を過ぎると、建物一つ無い無人の世界が広がっている。もちろん通行人など皆無だ。こんな場所で強盗に遭ったらひとたまりもない。無法地帯と言われるだけあるな、などと思いながら、街灯の少ない暗闇の街道の風景を眺めていた。周囲には治安の悪い場所に共通する、ピリピリとした妙な緊張感が漂っていた。

30分ほど走っただろうか、無人の世界から徐々にガヤーの町らしい風景になってきた。ここまで来ればガヤー駅はもう目の前だ。ほどなくして僕を乗せたリクシャーは無事ガヤー駅に到着したのだった。しかし、法外なリクシャー料金も含め、この時間帯に移動したことに後悔した。一歩間違えればトラブルに巻き込まれていたかもしれない。リクシャーを手配した青年が信頼できない態度であったことが、よりその気持ちに拍車をかけたのだろうと思う。

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どこもかしこも死人のように眠る人だらけで、まるで “ザ・スタンド” のワンシーンのようだった。

ガヤー駅は荒れていた。駅の構内に足を踏み入れると、足の踏み場もないくらいたくさんの人が床の上に寝転がっていた。その様はまるでスティーヴン・キングの小説、“ザ・スタンド”(The Stand)のように、あたかも大量の死体が転がっているシーンを連想させた。よく見ると構内に入りきらない人たちは駅の外でも寝ている。あまりにも異様な光景だった。

一難去ってまた一難、いろいろあってようやくガヤー駅に到着したが、安心はまだできない。なぜなら、恒例の鉄道の遅延があるからだ。今のところ7時間遅れは定番になっていた。鉄道の遅延具合によってはここからそうとうハードな持久戦になるはずだ。とはいえ、無法地帯の最悪の暗黒空間を抜けたことで、随分気持ちは楽になっていた。さてどうなることやら。


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2010'10'22(Fri)18:51 [ ブッダ・ガヤー ] CM0. TB0 . TOP ▲