見上げれば、そのすべては自由なのだから  GOLD EXPERIENCE: 世界を旅する黄金体験
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ラージダーニー・エクスプレス、いざコルカタへ
次なる目的地、“コルカタ”(Kolkata)は、広大なインドの国土の東端に位置しており、ガヤー駅から直線距離にして約460㎞と、まずまず距離は離れている。

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早朝のガヤー駅のホーム。明け方寝ていた人たちはどこへ行ったのやら。

大方の予想通り、4:00amに到着するはずのコルカタ行きの鉄道はこなかった。この頃には、インドの鉄道は予定時刻に到着するはずがない、という確信に満ちた結論に達していた。だが、予定時刻に到着しないのはまだいいが、毎回決まって7時間以上も遅れるというのは如何なるものか、さすがに理解に苦しむ。どこか意図的にやっているとしか思えないのだ。

鉄道が到着するのを鉄道駅でひたすら待ち続ける時間。2、3時間ならまだしも、10時間近いとなるとこれがなかなかつらい。特に1人旅だと、話し相手もおらず、眠るに眠れず、何をするにも重いバックパックを持ち歩かなければならない。しかも、いくら鉄道がこないからといって、気分転換に外を歩き回ることもできない。いつ鉄道がやってくるのか分からないので、ホームに流れる発着の放送に常に注意を払いながら待ち続けなければならないからである。

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ホームを徘徊するノラ犬軍団。上に下にと縦横無尽なんである。(左)上から見たホーム全景(右)

ブッダ・ガヤーを出発したときはまだ真っ暗だったのに、もうすっかり朝の空気が漂っていた。ホームには、シェパードのような数匹のノラ犬グループが、食べ物を求めて縦横無尽に走り回っていた。こちらが刺激しない限り、よほどのことがなければ彼等が襲って来ることはないが、飼い犬ではないので、ちょっとしたきっかけで何かが起こってもおかしくはない。

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ホームで座禅を組む老人。(左)マントの如く布を羽織り、気分はブッダか、はたまたジェダイか。(右)

ムラ染めが施された黒い大きな布をマントのように羽織り、ホームの石造りのベンチに腰を下ろし、ひたすら鉄道を待ち続けるその姿は、さながら座禅を組むブッダのように見えていたに違いない。ホームで座っていると、周囲をブンブンと無数のハエが飛び交っているのだが、長い旅路の末に悟りを得た僕には、もはやそんな攻撃は通用しないのだった。

ホームには貨物列車が停車していた。その車両と車両の隙間から対面のホームを覗くと、座禅に耽るインド人の老人の勇姿があった。こんな早朝からホームの上で、しかも半裸になって座禅を組むその姿はさすがという他はない。いわゆるプロフェッショナルというやつである。いかに悟りを得た僕と言えども、到底そこまではできないのであった。

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ようやくガヤーからコルカタへと向かう、コルカタ・ラージダーニーが到着!

僕はこの苛酷な鉄道の待ち時間の先に、ある秘策を準備していた。インドには “ラージダーニー・エクスプレス” (Rajdhani Express)と呼ばれる、ニューデリーとコルカタを結ぶ特急列車が走っている。日本で言う “新幹線” のような存在で、全車両エアコン完備の上、食事まで付いている、夢の豪華列車なのである。秘策というのは、ガヤーからコルカタまでの区間、このラージダーニーに乗ってみようという、なかなか楽しみな試みなのである。

待っているのがラージダーニーだけに、もしかしたらあまり遅延はないのではないかという期待感は大いにあったが、その期待はあえなく撃沈した。結局ラージダーニーは昼過ぎに到着し、これまでを上回る、約8時間もの遅れとなった。たとえラージダーニーであっても、インドの鉄道は予定時刻に到着するはずがないのである。そして、それはわざわざ危険な深夜に250ルピーもの大金を出して駅へと向かったことが無意味になった瞬間だった。

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至ってシンプルなラージダーニーの食事。(左)ちょっとしたオヤツも出るのだが、甘すぎた。(右)

到着早々にラージダーニーの車両へと乗り込み、自分の席を探す。席は奮発して “2A”(2等寝台)だ。これまでの鉄道の旅では、なんだかんだでことごとく邪魔が入ったが、今回はあのラージダーニーの2等寝台なのだからこれまでのようなことはあるまい。そう思い自分の席に行くと、そこはオヤジたちの溜まり場だった。僕の周囲の席はそろいもそろっていい年をしたオヤジで、彼等は集まって世間話に夢中になっており、一種のコミュニティを形成していた。

そんな場所に興味の対象である外国人旅行者が突っ込んで行ったわけで、乗車してから数分後にはオヤジたちに囲まれ、あれよあれよと質問攻めになっていた。彼等は日本人である僕がインドをどう思ったのか、日本と比べてどうなのかが知りたいようでいろいろ聞いてくるのだが、その中の1人が「以前知り合った日本人が、日本は仕事が大変だからインドに来たと言っていたがそんなに大変なのか?」と聞いてくるので、「そうは思わない、仕事が大変なのはインドも同じで、日本以上に苛酷な環境で働く人々の姿をインドで随分見た」と答えた。

そもそもインドで働くということと、インドを旅するということはまったく別次元の話なのであって、実際に現地で生活し、働くとなれば、インドだから楽ということはないと僕は思う。むしろ外国人が彼等の社会で生きていくというのは、より苛酷なのではないかとさえ思う。しかしまぁ何はともあれコルカタまでの道中ずっと話し込み、またも賑やかな時間を過ごしてしまったわけだが、彼等とはすっかり仲良くなって、いろんな話ができたのはよかった。

そうそう、ラージダーニーの食事だけど、オムレツとパン、バナナなどが付いた軽食で、味はそれほどおいしいという印象はなかったが、それでも鉄道の中で久しぶりに食べる食事は格別なものがあった。しばらくするとクッキーやケーキなどのオヤツの盛り合わせも持ってきてくれて、至れり尽くせりなのだが、オヤツはどれもものすごく甘くて、ちょっとしか食べられなかった。銀箔の付いたクッキーみたいのが見た目的にはちょっと面白かったかな。

どうやらインドの鉄道は今回も休む時間を与えてはくれないようだった。ラージダーニーであろうがそうでなかろうが、2等か3等かに関わらず、僕が乗ったインドの鉄道はいつだって賑やかだった。僕を乗せたラージダーニーは一路コルカタに向かって淡々と走り続ける。


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2010'10'23(Sat)19:52 [ ブッダ・ガヤー ] CM0. TB0 . TOP ▲