見上げれば、そのすべては自由なのだから  GOLD EXPERIENCE: 世界を旅する黄金体験
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地雷を踏んだらサヨウナラ!
カンボジア内戦時の1973年11月、一人の戦場カメラマンがアンコール・ワットに潜入し、消息を絶った。名は“一ノ瀬泰造”という。

一ノ瀬泰造はフリーランスの戦場カメラマンで、インド・パキスタン戦争の撮影のためバングラデッシュ・インドに向かい、1972年3月、ベトナム戦争の影響により戦いが激化していたカンボジアに入国し、シェムリアップに滞在した。当時、アンコール・ワットは、クメール・ルージュ(カンボジア共産主義勢力)の根拠地になっており、非常に危険な状況下であったのだが、彼はアンコール・ワットへの一番乗りを目指していた。1972年8月、カンボジア政府軍とのトラブルが重なり一度は国外に退去するも、翌年1973年6月、再びカンボジアに入国する。

それから5ヶ月後の1973年11月22~23日、彼は「うまく地雷を踏んだらサヨウナラ!」と友人宛に手紙を残し、単身アンコール・ワットに向かい、そのまま消息を絶った。

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それから9年の歳月が過ぎた1982年、シェムリアップの北東14kmに位置するプラダック村の草原で遺体が発見され、両親によって死亡が確認された。その後の調査で、一ノ瀬泰造がアンコール・ワットに向かったとされる1973年11月22日~23日に、彼はクメール・ルージュに拘束され、処刑されていたことが判明した。わずか26年の短い人生だった。

僕は、一ノ瀬泰造がどのような人間性の人物であったのか知らない。しかし、カンボジアの地に赴くと、その名を耳にする機会は多い。1999年に浅野忠信主演の映画、「地雷を踏んだらサヨウナラ」が公開され、没後30年になる2003年にはドキュメンタリー映画、「TAIZO」が公開されるなど、彼をテーマにした作品が映画や書籍などになっており、それをきっかけにして、若者を中心とした一ノ瀬泰造を崇拝するファンがいるのだという。中には実際にカンボジアに行き、彼の足跡をたどる、熱狂的な一ノ瀬泰造ファンもいるようだ。

そのように若者から英雄として讃えられ、崇拝の対象にすらなっている一ノ瀬泰造なのだが、少し見る角度を変えれば、戦場カメラマンとはいえ、なぜ自らの命を危険にさらすような場所に突っ込んでいくようなことをするのだ、と疑問を持たざるを得ない別の側面もある。2004年に、緊張感漂う中東情勢の中、周囲の忠告を聞かずに、イスラエルを経由してイラクに入国した日本人バックパッカー、香田証生さん(24)がアルカイダに拉致・殺害された事件は記憶に新しい。2つの事件を客観的に見た場合、一体この両者にどれほどの違いがあるだろうか。

危険の中に自らを投じ死を招いた、こういった事件の場合、「本人の情報収集能力が低かったのではないか」「責任は全て自らにある」という厳しい意見があるのは免れない。確かにその通りだ。また、危険の中にいると「危険に麻痺してしまう」という一面も否定できない。

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薪を乗せた自転車をこぐ、まだ幼い少年。(トンレサップ湖周辺にて撮影)

しかし、僕自身が一人のクリエイターとして見た場合、僕には彼の気持ちが理解できるような気がする。なぜなら僕が当時の一ノ瀬泰造と同年代の頃、自らのクリエイション以外何も見えなくなってしまうくらい没頭していたから。いつも乾いていて、作品を少しでも上のステージに引き上げたかったし、評価してもらいたかった。もしかしたら一歩方向性が異なれば、同じような生き方をしてしまったのではないかと考えてしまうこともある。時として僕達クリエイターはそのぐらい前のめりで、周囲が見えなくなってしまうことがある。

彼がシェムリアップに滞在していたときに撮影した写真を見ていると、戦場カメラマンとして彼がカンボジアという国に強く惹かれ、カンボジアの子供達の姿から何か感じ取るものがあって、“写真”というフィルターを通して、全身全霊で表現したかったのだろうという気持ちがよく分かる。それほどまでにカンボジアにはクリエイターの心を惹きつける特別な魅力があるし、貧困にあえぐ厳しい環境の中でたくましく生きるカンボジアの子供達にはインパクトがあり、経済的に裕福な先進世界に対して強いメッセージ性を持っている。

僕自身が一ノ瀬泰造を崇拝することはないが、その生き様には敬意を払いたいと思う。
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2009'11'28(Sat)00:26 [ ひとりごと ] CM2. TB0 . TOP ▲
COMMENT


Garyoさんは、色々な国に行かれるので、見る夢もそれはそれは豊富なんでしょうね。

ファッションデザイナーはどんな物のデザインをされているんですか??

興味ありありです☆
2009/11/28 08:40  | URL | 「不屈のポン様!!」ことポンタ #- [edit]


ポンタさん、こんにちは!

ハイファッションよりのアイテムをトータルで手掛けています。
服以外にも、バッグやブーツ、サンダルなどの小物も展開しています。
旅から得たエッセンスは、デザインの中に取り入れるようにしています。
機会があればそのうち紹介したいと思います。
2009/11/28 10:41  | URL | Garyo #- [edit]
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