見上げれば、そのすべては自由なのだから  GOLD EXPERIENCE: 世界を旅する黄金体験
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アーグラーの安宿
おおよそ予想できていたことだったが、“アーグラー”(Agra)の鉄道駅の外に一歩足を踏み入れた途端、リクシャーのドライバーたちが我先にと僕の周りを取り囲んだ。

デリーから約200㎞、鉄道はそれほどの遅延もなく順調に発車し、わずか2時間程の鉄道での移動だったので、体力も判断力も鈍ってはいなかったのだが、駅から外に出るなりこれでは、正に考える間もないという状況だ。こうなることは分かっていたのだが、予想以上にドライバーたちが積極的なのと、駅から出ないわけにもいかないので、避ける手段はない。

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宿の近くのアーグラーの街並み。デリーと比べるとこじんまりとした街並みだ。

リクシャーのドライバーたちが、これだけ熱心に勧誘するのには理由がある。ここアーグラーは、インド屈指の観光名所である、あの “タージ・マハル”(Taj Mahal)がある街で、駅から街の中心地区まではかなりの距離があるため、オートリクシャーなどの交通手段を利用せざるを得ないからだ。それ故に駅前には大勢のドライバーが待機しているのだ。

実は僕は事前にリクシャーの手配をしてあり、リクシャーのドライバーとはプリペイドタクシーのカウンター近くで待ち合わせていたのだが、こう囲まれていてはどこに何があるのか探すのも一苦労だ。とりあえず周囲のドライバーたちに、「他のドライバーと待ち合わせをしているから、君たちのリクシャーを利用することはできない」ことを伝え、それでもしつこく勧誘してくる彼らを振り切って待ち合わせの場所を探したのだった。

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ホテル・カマルの入口。安宿だがアメリカのモーテルを思わせるしっかりした建物。

待ち合わせの場所を見つけ、しばらく周囲を見回したのだが、それらしき人物は見つからず(リクシャーのドライバーだらけで、どれが僕が手配したドライバーが判別できない)、どうしたものかと考えていたら、声をかけてくる青年がいた。どうやら彼が待ち合わせをしたドライバーのようだった。周囲のドライバーたちは、客を取られたことに残念がって彼をこずいていたので、きっとドライバー同士、お互い周知の間柄なのだろう。

彼は僕をリクシャーまで案内すると、そこにもう1人の男性が。2人でなにやら話していたが、リクシャーの運転席にはそのもう1人の男が乗ってきた。そして最初に声をかけてきた青年は、そのまま彼にドライバーを譲り、リクシャーは走り出した。想定外の状況に最初は警戒していたのだが、運転しているその男が「奴と俺とは兄弟で、俺は兄貴だ」というので、妙に納得した。そう言われてみれば、2人の雰囲気はどことなく似ていて、2人共なかなかの男前なのだが、まだあどけなさの残る弟に対して、兄貴の方は外見も性格もより男っぽい雰囲気だった。

その話を聞いてすっかりリラックスして、いろいろ会話をしながら街の中心地区へと向かった。彼は僕の予定をいろいろ聞いてきて、自分がアーグラーを案内したいとアプローチしてきたのだが、僕は自由に歩き回るのが好きなので、そのことを説明し、その代わり帰りの移動はお願いすることにした。彼は新たな仕事を得られたことが嬉しかったのだろう、何度も「約束だよ!」と確認してきた。僕にとっても帰りのリクシャーが決まるのは助かる。

それにしてもリクシャーの中から見ていると、アーグラーの鉄道駅から市街の中心地区までは、地図上の距離感以上に距離があり、これは駅から徒歩で中心地区に向かうのは厳しいだろうなと思った。そして、途中の風景も中心部に近づくまでは殺風景だった。

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ホテル・カマルの部屋の様子。天井が高く、清潔感のある部屋だが、蚊は多い。

しばらくリクシャーで走って到着したのは “ホテル・カマル”(Hotel Kamal)。アーグラーでは “シャンティ・ロッジ”(Shanti Lodge)と並んで非常に人気のある安宿で、その人気の秘密は屋上からの景色に尽きる。アーグラーは意外にも宿選びが重要で、とりわけ観光の主役であるタージ・マハルを、ホテルの屋上から眺めることができる宿に人気が集中している。そのため、人気の宿は前もって予約を入れておいた方が無難だ。

さて、部屋の中は至ってシンプルで、ベッドも大きいし、安宿にしては清潔感がある。ただし例によって例のごとく、蚊が多い。部屋に入って早々、無数の蚊の気配を察知し、持ってきた蚊取り線香に火を付けた。安宿泊まりのバックパッカーには儀式のようなものかもしれない。特にインドは蚊が多いので、蚊取り線香は必需品だ。

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すぐ近くにシャンティ・ロッジが。(左)下を見下ろすとインドらしい民家の様子が見えた。(右)

蚊取り線香を焚いて、さっそくホテル・カマルの一番の売りである屋上の景色を見に行くことにした。どうやら屋上がレストランになっているらしい。宿に着いたら安堵感か妙に腹が減ってきた。そういえば朝から何も口にしていない。

屋上への階段を登っていくと、そこに広がるアーグラーの街並みと、遠くに見えるタージ・マハルの全景に魅入った。3階建てなので、屋上がそれほど高い場所にあるわけではないが、周囲に高さのある建物がないので、ぐるりと360°のビューを楽しむことができる。

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ホテル・カマルの屋上レストランから見る、タージ・マハル。

日中の一番暑い盛りの時間帯だったので、屋上はすさまじい熱気だったが、腹も減っていたのでチキンカレーをオーダーし、タージ・マハルを見つめながら食べた。屋上にいるのは僕1人。さすがにこの暑い最中に屋上で日光浴をする物好きな客はいないようだ。

ホテル・カマルには屋上以外にも、1階の入り口付近にレストランスペース(ここで言うレストランは、日本的な感覚の大規模なレストランとは多少趣が異なるが)が設けられているが、ほとんどの客は1階ではなく屋上のレストランを利用するようだ。タージ・マハルの全景を見ながら食事ができるのだから当然と言えば当然なのだが。ただし、食事は下から運んでくる。味は、残念ながら特筆するような味ではなく、かといってまずいというわけでもない、といったところだろうか。むしろ、この屋上からの景色がこの宿の最大の魅力で、早朝や日没近くの時間帯になると、タージ・マハルの全景を一目見ようとたくさんの観光客が集まってくる。

ムガル帝国時代” は首都でもあった、かつてのインドの中心で、果たしてどんな世界が待っているのだろうか。期待に胸を膨らませ、僕のアーグラーは幕を開けた。
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2010'07'06(Tue)03:03 [ アーグラー ] CM0. TB0 . TOP ▲
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