見上げれば、そのすべては自由なのだから  GOLD EXPERIENCE: 世界を旅する黄金体験
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母なるガンガー
インドの旅で最も魅力を感じた場所はどこかと聞かれたら、僕は迷わずに “ヴァラナシ”(Varanasi)と答えるだろう。ヴァラナシとはそういう場所で、ヒンドゥ教徒にとっては至高の聖地であって、聖河ガンガーが流れるこの街にはインドのすべてが凝縮している。

だから、僕にとってヴァラナシの地に降り立つということは憧れだったし、ある意味今回のインドの旅のハイライトと言えるかもしれない。

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ホテル・アルカの前にあるガートにて。日の出前で、辺りはまだ暗い。

早朝5時、まだ陽が昇らない薄ぼんやりとした暗がりの中、僕は “ホテル・アルカ”(Hotel Alka)の自分の部屋から出て、中庭の階段を上がっていた。

ガンジス河(以下ガンガーと明記)沿いでは、日の出と共に多くの人々が沐浴をすることで知られている。この瞬間を見逃すわけにはいかないな、そう思ってまだ暗いうちに出かけることにしたのだ。都合のいいことに、僕が宿泊しているホテル・アルカはガンガー沿いにあり、ホテルから1歩外に出れば、そこはもうガンガーなのだ。

まずはガンガー沿いを歩いてみようか。そんなことを考えながら、ホテルのエントランスへと向かうと、まだ堅く閉ざされている鉄の扉の外に、1人のインド人の若者が立っていた。「やあ、おはよう」と僕が挨拶をすると、彼は「ボートに乗らないか?」と言うのだ。ふむ、ボートから見るガンガーか。滞在の間には乗ろうと思っていたのだが、これはいいチャンスかもしれない。僕は「いいよ、もし君が安くしてくれるのならね」と言ってニッコリ微笑んだ。

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ボートを漕ぎながらガイドをしてくれたサントス。(左)うっすらと空に赤みがかってきた。(右)

先導する彼の後についていくと、ガートの近くに小型の手漕ぎボートが数隻停泊していた。「これが君のボートかい?」そう聞くと、彼は「ああ」と言ってボートのロープを手繰り寄せた。

とりあえずガンガーを上れるところまで上って、それから戻ってくれ」「それと・・・サンライズを見る最高のロケーションはあるかい?」と言うと、彼は「まかせてくれ」と言ってボートを漕ぎ始めた。ボートはゆっくりとガンガーを上っていく。

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早朝のガートは、大勢の沐浴客で埋め尽くされていた。

程なくして、ヴァラナシのガンガー沿いの数ある “ガート”(Ghat)の中心に位置する、“ダシャーシュワメード・ガート”(Dashashwamedh Ghat)が見えてきた。まだ日の出前だというのに、沐浴する人々、そしてそれを見学する人々で混み合っていた。

それにしても、なんという絶景、なんという混沌とした世界なのだろう。日の出前でまだ薄暗く、少し霧がかっているせいか、河沿いに不自然なほど乱立している多種多様な建築物と街灯の灯りが、なんともいえない幻想的な光景を彩っている。

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ダシャーシュワメード・ガートは最も賑わう中心エリア。

昨晩ヴァラナシに到着して、暗闇の中、ホテルの中庭からガンガーを見下ろしただけだったので、今眼前に広がっている幻想的な光景は、これが現実かと疑うくらい新鮮なものだった。

ガンガーにはたくさんの大小様々なボートが浮かんでいて、僕と同じように観光目当てで乗っている外国人旅行者も多かった。時々目が合うと、お互い笑顔で挨拶を交わした。

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ガートで沐浴する人たち。中には泳いでいる人も。

人々の沐浴姿を横目に見ながら、ボートはゆっくりと進んでいく。乾季のシーズンで、川の流れが穏やかなので、小さな手漕ぎボートだったが非常に安定していた。

沐浴するガートにもそれぞれ特徴があるようで、上の写真のように男性が大半を占めるガートもあれば、女性のみのガートもある。男性は衣服を脱いで、下着姿で沐浴をしていた。

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「あらゆるものを流す」悪習により、ガンガーの水質はとんでもないことになっている。

ガイドのサントスは、時々河の水を手ですくっては口の中に入れていた。ガンガーの水質汚染は有名で、生活排水やゴミ、工場排水、時には遺体までもが流されているため、沐浴するだけならまだしも、飲用すれば体に深刻な影響を及ぼす可能性が極めて大きい。

気になったので、サントスに「ガンガーの水を飲んでも問題ないのかい?」と聞くと、「ああ、子供の頃から飲んでいるけど全く問題ない」「それに、ヴァラナシの水はすべてガンガーから引いているんだ」とのこと。確かに子供の頃からこの水で育ったのであれば問題ないのかもしれないが、おそらく日本人が飲んだら十中八九イチコロだろう。

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延々と河沿いに立ち並ぶ建築物、沐浴する無数の人々、そして河に浮かぶボート。

そんなことを話しているうちに、にわかに東の空が赤みを帯びてきた。「ほら、あそこに太陽が昇っている」サントスが指さす先に、太陽の輪郭がうっすらと浮き上がっていた。ちょうどガンガーの対岸が東なので、太陽は対岸越しに昇ることになる。

乱立して建築物が建ち並ぶ、混沌とした河沿いの対岸は一体どうなっているのだろうか。そこには反対側からは想像もつかないような、あまりにも対照的な風景が広がっていた。

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ボートの上から太陽に向かって祈りを捧げるヒンドゥ教の信者。

これが対岸の風景。対岸には何もなかった。ただ砂漠のような砂地帯が広がっていた。そして、地平線の奥から真っ紅なルビーのような太陽が、ゆっくりと昇っていくのだった。太古の昔からおそらくは永遠不変の風景であろうその光景に、しばし魅入ってしまうのだった。

対岸には、少しだけボートの姿が見え、それがまるで蜃気楼の中のキャラバンのように、不思議な世界観を放っていた。「これが、これがガンガーか・・・」僕はつぶやいた。

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朝陽越しのボートのシルエット。ちょうどこのくらいのボートを貸し切った。

少しずつ太陽が上に登っていくにつれ、紅いルビーは輝きを増した。それに伴い空の色も少しずつ変化していく。輝きが増すにつれて、その光がガンガーの水面に写り込む。

ガンガーという大河の中央で、昇っていく深紅のルビーを見つめていた。頭の中は空っぽで、目の前に輝く至高のルビーと、不思議な色彩を放つ空のことでいっぱいだった。
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2010'08'17(Tue)00:57 [ ヴァラナシ ] CM0. TB0 . TOP ▲
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