見上げれば、そのすべては自由なのだから  GOLD EXPERIENCE: 世界を旅する黄金体験
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再会
夕方、ガンガーを眺めながら、特に目的もなくガート沿いを歩いていた。ヴァラナシ滞在中は、ガート沿いをのんびり歩くのが日々の日課になっていた。

その日がいつもと違っていたのは、いよいよ僕のヴァラナシ滞在もあとわずかだということだけだ。厳密に言うと、今日が最後の夜になるだろうということだった。

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夕暮れ時のガートに座る人たち。絶景で時が経つのを忘れてしまう。

ヴァラナシには市街地区もあるし、ガンガーの手前に編み目のように広がる細路地には、外国人向けのレストランや商店など様々なお店がひしめき合っていて、そういったお店でくつろぐのも快適な時間ではあるのだが、何と言ってもここはガンガーあってのヴァラナシなのだ。

太陽が昇る前から太陽が沈んだ後まで、その時間の大半をガンガーを眺めて過ごした。

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ダシャーシュワメード・ガート近くのお供え物の花を売るお店。

日々同じような行動パターンで、よく飽きないなと呆れられてしまいそうだが、飽きなかった。もっと長期間、先日日本食レストランで知り合ったカップルのように、それこそ6ヶ月以上もヴァラナシで過ごしていたら、きっと飽き飽きしていたに違いないとは思うのだが、今のところ毎日新しい発見があって、1度として同じヴァラナシを見たことはなかった。インドの他都市であればまずないだろうと思えるくらい、同じ行動パターンの毎日が不思議と新鮮だった。

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ガートの階段で山羊に母乳を与える子供達。

ヴァラナシ最後の夜の日、夕方ホテルに戻ろうと河沿いのガートを歩いていると、ガートの階段にポツンと1人座る東洋人の姿があった。「あっ!?」どちらが先に声を出したのだろうか、目が合った瞬間、お互いすぐに気が付いた。そこにいたのはアーグラーのレストラン、“ジョニーズ・プレイス” でたまたま相席になり話をした韓国人のサンジェ君だった。

僕はすぐに「やあサンジェ、ものすごい偶然だね、まさか会えるとは思っていなかったよ!」「一体どうしていたんだい?」と声をかけた。「うん、実はまだヴァラナシに着いたばかりなんだ」「サルナートに立ち寄ってからこっちに来たんだけど」と彼。

サルナート”(Sarnath)はヴァラナシの北東10㎞に位置する、ブッダが悟りを開いた後初めて説法を説いたと言われる四大仏跡のひとつで、仏教徒にとっては重要な聖地だ。

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テラスレストランの高台から見下ろした、夕暮れ時のガンガーとガートの風景。

以前サンジェ君とアーグラーで話をしたとき、大まかにお互いのルートを教え合っていたので、僕がヴァラナシに滞在している間のどこかで彼がやってくるだろうことは予想していたのだが、正直言って再び会うことができるとは思っていなかった。

というのも、ヴァラナシは連日お祭りのような街で、ガンガー沿いはもちろん、市街も絶えず人で混み合い混沌としていて、ガート沿いもかなり広範囲に広がっているので、たとえ同じ街に滞在していてもなかなかうまく出会うのは難しかったりする。

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同じ画角から、夜の帳が降りはじめたガンガーとガートを。

しばらく2人でガートの階段に腰掛けて、あれからどうしていたのかなど、お互いのことをあれこれ2人で話していたのだが、陽が暮れて辺りがほの暗くなってきたので、僕は「サンジェ、せっかくだしもっとくつろげる場所で話をしないか?」と彼を誘った。

彼はまだヴァラナシに着いたばかりであまり道に詳しくないと言うので、とりあえずそこからすぐ近くにある、僕が宿泊しているホテル・アルカのテラスレストランで食事をしながら話をすることにした。とりたてて料理がうまいと言うわけではないが、メニューの種類も豊富だし、何より河沿いのビューは最高だ。彼のホテルもすぐ近くなのだそうだ。

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星こそ多くはないが、雲一つ無い澄み切った美しいグラデーションの夜空は今も心に残っている。

その晩はサンジェ君と夜遅くまで思いつくありとあらゆる話題を話した。家族のこと、日本のこと、韓国のこと。サンジェ君にはお姉さんがいて、先日結婚したのだそうで、写真を見せてくれた。先日入った日本食レストランで、韓国人の女の子が僕を見つめていたのが気になっていたので、「韓国人から見る日本人はどんなかんじ?」と聞いてみると、「ものすごくファッショナブルだ」とのこと。「逆に日本人は韓国人をどう思ってるの?」と聞いてくるので、「君たちはメンタルの芯が強くて、とてもエネルギッシュだ」と答えた。

実は僕は韓国人とはアメリカ留学時代に随分親しく付き合ったことがある。その中には韓国からの留学生だけでなく、在米2世もいたが、一緒に旅行したこともあるし、毎日のように学校や郊外のテニスコートに集まってはテニスをしていた。彼等はタフで、社交的で、たかがスクールテニスと言えども真剣に打ち込んでいた。僕も1つのことにのめり込むと夢中になってしまう性格なので、そんな彼等と自然と気が合ったのだろう。そのことを彼にも伝えた。

ふと見下ろすとガンガー沿いのネオンが、まるで無数の灯籠の灯火のように色とりどりの光りを放っていた。上を見上げると絶妙なパープルの色彩の澄み切った夜空に、三日月型の月が浮かんでいた。気が付くとすっかり夜遅くなっていた。僕が「随分遅くなってしまったね、割り勘でいいかい?」と聞くと、「今夜は僕が払うよ、いろいろ教えてもらったし」と彼。気を遣わないでいいよと言ったんだけど、なんだかんだで彼が支払ってくれた。

帰り際、「次はネパール、カトマンズで会えるといいね!」と言ってお互い握手をして別れた。彼はこの後ヴァラナシから陸路でネパールに入り、ポカラを経由してカトマンズを目指すのだそうで、僕もコルカタからカトマンズを目指す予定だ。サンジェ君は夜の帳が降りた街灯のない暗い細路地の中に消えていった。運が良ければまた彼と会えるに違いない。
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2010'09'18(Sat)18:50 [ ヴァラナシ ] CM0. TB0 . TOP ▲
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